私と父とハーマンミラー(6)
こんにちは。筆者のタロショーです。
ある日のことです。
父がテーブルの上に何冊もミッドセンチュリー関連の本を無造作に出していたので、私はその中から表紙の見出しがちょっと気になった雑誌を手に取ってパラパラと適当に見てました。
「なんか見てるとビンテージ家具の自慢大会みたいだね」
と父に言うと
「ビンテージ家具なんてのはほとんど人間の都合だと思うよ。ビンテージ家具という名に包まれた中古家具なのに。
今でも見るだけなら楽しいけど、もうコレクション欲も無くなったから欲しいとは全然思わないな。
これの価値が~あれの価値が~ってのを見たり聞いたりするのが最近うるさく感じるのよ。
そういうのにもう疲れてきたってのも俺が家具をたくさん手放した理由のひとつだしな。
なんでもそうだけど、自分の中で線引きをしないとキリがないわ」
みたいな返事が返ってきました。
どんなものでもそうですけど、ビンテージとかオリジナルってなんとなく響きがいいですもんね。確かに売る人にも持つ人にも色々と便利な言葉だと思います。家具の場合、定義は30年以上経過してるものがビンテージ家具、100年以上でアンティーク家具と呼ばれるみたいです。 多分。
うがった見方をして雑誌を読んでみると、ショップの人には”それなら店に出して売らずに自分でそのまま所有してればいいのに”と思ったり、所有者の表情や文面で自慢のビンテージ家具でマウント取りたいのが透けて見えてきたりしてとても面白かったです。もちろん個人的にそう思っただけでホントのことはわかりませんけど。(笑)
「もうそんな本いらないから見たら捨てといてくれ」
と読んでる私に父が言いました。そうです、父は本の整理をしていたんです。結構この類いの本、長いこと大事に取っておいたんですね。
お気に入りのミッドセンチュリー関連の洋書と写真集の数冊だけを手元に残しておくそうで、残りは廃棄することになりました。
すると、母がその中の一冊を取り出して「懐かしいねー」と言いながら美容オイルの詰め替えの下敷きにしていました。
表紙で得意げな表情を浮かべていた人の顔はオイルが染み込んで歪んでいました。
続く。