私と父とハーマンミラー(3)
こんにちは。筆者のタロショーです。
このシリーズもついに3作目まできました。
今回も最後まで読んでくださると嬉しいです。
我が家にはイームズハウスのリビングに置いてあるのと同じ、大きなモンステラ・デリシオーサという植物があります。父がそれに憧れて、スペースの余裕もないのになんとかなるさと買ってきたのです。父は容姿に似合わず、植物を育てるのが結構上手です。(笑)
室内にある植物全てをセラミックソイルと液肥だけで育てているので、虫も出てきません。薬剤も滅多に使いません。
本当はモンステラを1年中リビングで育てたいそうです。が、無理でした。我が家の住環境は日当たりが悪く、風通しもよくありませんから毎年のように生育期の春から寒さ限界の冬までは外に出して育てています。そして大きくて邪魔です。(笑)
とても丈夫で育てやすいのですが、葉から水滴がたくさん落ちて床や家具が濡れますし、1枚60~65cmくらいある大きな葉にはすぐにホコリが被るので拭き掃除も大変です。気根をたくさん伸ばした姿はホントに格好いいのですが、かなり面倒くさい植物です。イームズハウスのようにはいきません。現実は甘くないですね。
さて、そんなモンステラや他の植物たちを、今年もまた暖かくなってきたので外に運び出し、前回、悩んだ末に思い切ってシェルチェアを手放した父は、今までの家具への執着心が嘘みたいに薄れたようで、次はリビングのメインテーブルであるノグチテーブルを手放すことに決めたようです。
これは絶対に手放さないだろうと思っていたので、ちょっと驚きました。
このテーブルはガラスの天板がよく曇ります。定期的に家族で軍手をはめて協力しながら傷を付けないよう丁寧に扱い磨いてきたのですが、とにかくその強化ガラスの天板が重く、一人で両面を磨くのは困難です。毎回、家族全員の気分とタイミングが揃わなければ磨く事が出来ない、そんなストレスに父は耐えられなくなったようです。
綺麗好きなのはわかるけど、長年こんなに大事にしてきたのにそんな理由で手放していいの?と思ったのですが、悩み抜いた父の気持ちは変わりませんでした。
「正直、手放すのは惜しいけど俺ら夫婦の老後のことまで考えるとさ、この重さ、無理だろ」
と。まだまだ先の話なのに、ホント思考が先走りし過ぎです。
そして、ノグチテーブルの場所には別の部屋に置いてあったイームズのCTW、プライウッドコーヒーテーブルを持ってくることにしたようです。
確かにこのプライウッドのテーブルは軽くて移動も楽ですけど、見た目はまるでちゃぶ台です。
私はノグチテーブルの方が好きです。(大学の課題の一環でイサムノグチを選択したのはコレの影響です。笑)
比べるとデザインの素晴らしさも高級感もまるで違いますから。ハーマンミラーの家具に全く関心のない母は、重労働が減るから助かると嬉しそうにしていましたけど。
家族で最後のテーブル磨きを済ませた後、父は複雑な表情で綺麗になったテーブルを眺めながら、今回もまた「全てお前に任せるわ」と頼んできました。
私は前回と同様、ノグチテーブルをお金に変えました。父は今回もまたお金を受け取らなかったので、私は小笠原諸島の旅行代金に充てました。(笑)
何故、父はお金を受け取りたくないのか理由はわかりません。変な罪悪感でもあるのでしょうか。
シェルチェアが無くなり、ノグチテーブルも無くなった我が家のリビング。別の部屋から持ってきたプライウッドコーヒーテーブルにその日の夜、早速、母がテレビのリモコンを落として大きな傷を付けました。
そして、また一段と和風テイストが強くなり、時代が古くなったように見える我が家のインテリア。それなのに逆に違和感が無くなって似合ってしまうという不思議な現象が起きました。
続く。